「民法等の一部を改正する法律」(令和3年4月28日法律第24号)において、民法が改正されました。施行日は、2023年4月1日です。
その改正の内、共有地を円滑に利用できるように、今回の改正では共有制度の見直しがされました。今回は、共有物の変更について説明します。
旧民法251条の規定では、共有物の変更、処分する場合、仮に軽微な変更であっても、共有者全員の同意が必要でした。旧民法によれば相続登記は義務でなかったので、相続が発生しても相続登記がなされず、多くの所有者不明土地が生じました。相続人が何世代にも渡り多数であったり、相続人の一部が所在が不明であったりすると、共有者の全員が同意できず土地の円滑な利用が困難でした。
今回の改正では、共有物に変更をくわえるが、軽微なもの(形状(外観や構造等)又は効用(機能や用途等)の著しい変更のないもの)については、持分の価格の過半数で決定できることが定められました(改正民法251条1項)。
軽微な変更の具体例としては、砂利道のアスファルト舗装や、建物の外壁・屋上防水等の大規模修繕工事などが民事局に紹介されています(令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント)。
また、共有者の一部が誰であるか不明、又は共有者が行方不明のときは、裁判所の決定があれば、全員の同意がなくとも、その共有者以外の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができるようになります(改正民法251条2項)。
共有物の変更行為には上記のとおり、原則共有者全員同意が必要です。共有物の売買は変更行為にあたりますので、共有者全員の同意が必要となります。しかし、共有者の一部に所在等不明共有者(共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない)がいる場合には、所在等不明共有者の同意が得られない為、変更行為が困難となります。
そこで改正前は、共有者の一部が共有者が誰であるか不明、又は行方不明である共有物を処分(売買など)するには、家庭裁判所へ不在者財産管理人を選任の申立をして、選任された不在者財産管理人の同意、家庭裁判所の許可を得て、所在等不明共有物の処分を行うこと若しくは、共有物分割訴訟を提起し、分割後の土地を売却するという方法が主な対策でした。従来の方法では、時間と労力がかかり、共有物の利用することに支障が生じていました。
改正民法では、共有者の一部に所在等不明共有者がいる場合、裁判所は他の共有者の申立てにより、当該共有者に所在等不明共有者の持分を取得させる旨の裁判をすることが原則として可能となります(改正民法262条の2第1項)。
この規定により共有者が所在等不明共有者の持分を取得したときは、所在等不明共有者は、当該共有者に対し、当該共有者が取得した持分の時価相当額の支払を請求することができます(改正民法262条の2第4項)。
なお、所在等不明共有者の持分が相続財産に属する場合には、相続開始から10年を経過する前までは、裁判所は所在等不明共有者の持分取得決定をすることはできないことになっています(改正民法262条の2第3項)。
また持分取得の請求があった持分に係る不動産について共有物分割(民法第258条第1項)の規定による請求又は遺産の分割の請求があり、かつ、所在等不明共有者以外の共有者が前項の請求を受けた裁判所に第1項の裁判をすることについて異議がある旨の届出をしたときは、裁判所は、第1項の裁判をすることができません。(改正民法262条の2第2項)
さらに、改正民法では、共有者の一部に所在等不明共有者がいる場合、裁判所は、他の共有者の請求により、所在等不明共有者以外の共有者全員が自己の持分を第三者へ譲渡することを停止条件として、その共有者に所在等不明共有者の持分を第三者に譲渡する権限を付与する裁判をすることができることができます(改正民法262条の3第1項)。
これにより、共有地が第三者へ売却された場合には、所在等不明共有者は、譲渡した共有者に対し、不動産の時価相当額を所在等不明共有者の持分に応じて按分して得た金額の支払いを請求することができます(改正民法262条の3第3項)。
なお、この場合も、所在等不明共有者の持分が相続財産に属する場合には、相続開始から10年を経過する前までは、裁判所は、持分の譲渡権限を付与する裁判をすることはできません(改正民法262条の3第2項)。
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