弊所に抵当権抹消の依頼で来所されたAさん。
お話を伺うと、
土地:AさんとBさん(Aさんの妻)とCさん(Aさんの父)の3名で共有
建物:AさんとBさんの2名で共有
となっており、
土地と建物が、D会社の抵当権(債務者:Aさん)の共同担保となっています。
登記の一括申請の原則は、不動産登記令第4条但書により、
「①同一の登記所の管轄内にある二以上の不動産について申請する②登記の目的並びに登記原因及びその日付が同一であるときその他③法務省令で定めるとき」には登記は一括申請できることとされています。
今回、①土地と建物は同じ所在地であり、同一の登記所(法務局)の管轄内にある二つの不動産ですが、②土地と建物で所有者が異なりますので、登記の目的「抵当権抹消」は同一であっても、登記原因は同一とはいえません(当事者、つまり、登記権利者である所有者が同一であることが要求されるため)。
しかし、同じ債権(AさんのD会社からの1000万円の借入)を担保するために土地と建物に設定された抵当権であるにもかかわらず、土地と建物それぞれについて、つまり2件の抹消登記を申請しなければならないのは手続きとして迂遠です。
そこで、以下のような先例が出されました。
昭和42年3月13日民事甲305号民事局長回答
なお、登記の申請書の「権利者」の部分には、Aさん、Bさん、Cさんを連記し、「不動産の表示」の部分には、土地と建物を記載し、それぞれの持分と所有者も記載することとなります。
では、土地と建物を一括申請できるとして、登記の申請人はAさん、Bさん、Cさんの誰になるのでしょうか?
土地と建物を一括で申請する以上、土地のみの所有者であるCさんでは、建物の登記申請まではできないことはわかります。AさんとBさんが共に登記申請人となる必要があるのでしょうか?
不動産を共有している場合、抵当権抹消登記は、共有者のうちの一人からでも申請することが可能です。
抵当権の抹消は、他の共有者に不利益が及ぶ行為ではなく、共有者全員の利益となる行為です。そのため、民法第252条の保存行為として、特定の1名が、共有者全員の代表として(他の共有者に代わって)抵当権抹消登記の申請をすることが可能となります。
なお、共有者の一人から登記申請自体は可能(司法書士への委任状も1名のもので問題ありません)ですが、登記の申請書の権利者の部分には、共有者全員の住所・氏名を記載する必要があります。その場合、申請人となる1名について、「申請人」であることを追記します。
今回の場合、権利者としてAさん、Bさん、Cさんを連記し、Aさんの表記は「(申請人)A」とします。司法書士への委任状も、Aさんのもののみで問題ありません。なお、登記の申請書には、共同担保の目録番号を記載し、抹消する抵当権および担保となっている不動産を特定することが必要です。
営業時間のご案内
9:00-18:30